クローン、是か非か
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| マーサ・C・ナスバウム キャス・R ・サンスタイン /編 | |
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| 日本経済新聞 1999年10月17日(日曜日) | |
| クローン羊ドリーの誕生は、大きな話題となったので、ご存じの人も多いはずである。しかしもとの論文まで読もうという人は、少ないに違いない。 この本の冒頭は「哺乳動物の胎児および成体の細胞に由来する生存能力を持った子孫」という表題の論文である。つまりこの長い表題のなかの「子孫」というのが、ドリーを含んでいるわけである。ただし論文自体は短く、この訳書で十頁を占めるに過ぎない。 本の残りの部分は、クローンに関するさまざまな分野の人からの論評である。全体は五部に分かれており、それぞれ科学、批評、倫理と宗教、法と公の政策、想像と幻想題されている。たとえば科学の部分の執筆者はスティーヴン・グールド、リチャード・ドーキンス、さらに科学記者のジョージ・ジョンソンという顔ぶれである。倫理、宗教、法といった部分は、むろん法学や社会学の専門家の意見である。親切なことにクリントン大統領により組織された国家生命倫理諮問委員会の報告書のうちの一章も付されている。クローン技術を人に応用することについて、宗教界の意見を総説して述べた部分である。 最後の「想像と幻想」は、クローンに関わる短編小説と詩である。クローンに関して、これまでさまざまな論評を集めた本はむろんない。本というよりは、雑誌の特集とでも言うべき印象がある。ただし原著が載せられていることでもわかるように、この本は資料的価値を持っている。クローンに興味を持つ一般の人には、大切な文献になるはずである。 それぞれの意見については読んでくださいというしかない。読んでいて私も一言いいたくなったが、ともあれこうした百家争鳴というのも悪くない。問題自体がそれほど深刻なことではないから、こうした試みができるのであろう。面白い時代になったものである。 中村桂子、渡会圭子/訳(産業図書・2800円) | |
| 北里大学教授 養老 孟司 | |
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| 讀賣新聞 1999年9月19日(日曜日) | |
| 自由な論議が問題意識を具体化 | |
| 科学技術の進歩によって、生命誕生と死の臨床現場に、全く新しい状況が出現している。体外受精の普及で米国では、代理母、借り腹、借り卵などが普及した。受精卵遺伝子診断の開発で、子の誕生をコントロールすることもできる。 延命医療の進展によって尊厳死、安楽死の概念が生まれ、新たな死の概念の脳死がが定着した。遺伝子の構成が全く同一の生物を複数作るクローン技術また、こうした生物研究の延長線上にある。クローン羊「ドリー」の誕生で、にわかに人間のクローン実現の可能性が出てきた。 性行為の伴わない子の誕生、男性が必要ない生殖医療技術は是か非か。 この本は、科学、倫理、宗教、法律、社会学者らの論文と小説、詩を収納したものだが、幅広い論旨と旗幟鮮明な論点は、とれもこれも問題意識を具体的に想起させてためになる。 ゲイやレズビアンの立場からクローンを論述されると、人間の種の存続とは何かを改めて考えさせられ、こうした人々への社会的差別の現実が浮かび上がってくる。 クローンをを不妊の新しい治療法として位置づけ、遺伝病の回避などによって個人的にも社会的にも利益があるとするクローン賛成論もまた、それなりの説得力を持っている。 生命現象の根源を考え、人間の本質、科学技術の進歩に対する社会のあり方などへと思考範囲が自然と広がっていくのは、論議する内容が自由でダイナミックに構成されているからだろう。 日本でもクローン羊の登場後、政府機関で審議会が立ち上がり、マスコミでも取り上げられた。しかし、その議論は、倫理、法律、社会、などの抽象的言葉が飛び交うばかりで、日本の社会や価値観に立って自ら判断する内容にはならなかった。この本を読んで最も感じたことは、実はこの彼我の差である。 | |
| 中村桂子、渡会圭子/訳 | |
| ナスバウム=シカゴ大法律、倫理学教授 サンスタイン=シカゴ大ロースクール政治科学教授 | |
| 評者・馬場錬成(本社論説委員) | |
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| 出版ニュース '99.10/中 |
| クローン、是か非か |
| クローンといえばSFの世界の話しとしてしか考えられてこなかったが、クローン羊ドリーの誕生以降は、近い将来、ヒト・クローニングの可能性があるのではないかという議論が盛んにされるようになってきた。 本書も、このクローンについて議論するものであるが、ここではまずクローンそのものの現実性を科学的に解説し、実際にヒトのクローンが生まれたとしても、別々の場所で育った双子ほども似ていないことを示したのちに、ヒト・クローン誕生によって起こってくる倫理的、政治的、社会的、法律的な問題について考え、ヒトに対するクローンの実施と禁止が、それぞれどのような影響を及ぼすかという点にまで検討を行っている。結論から言えば、クローンの是非については、まだ早すぎるというところに落ち着いているが、これほど多種多様な立場から意見を求め、議論しているひと自体が新鮮で、かつ学ぶところが多い。 (B6判・416頁・2800円・産業図書) |
| (「出版ニュース '99.10/中」より引用) |
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| 東京新聞 1999年10月10日(日曜日) |
| この一冊 |
| 人間が生命を思うままに創り出すことは可能になるのか。クローン羊「ドリー」の誕生によってヒト・クローンも現実味を帯びてくるようになり、その可否をめぐる議論も活発化してきた。 この技術をどう受けとめればよいのか。願望や懸念、希望や警戒心の交錯する論争を、@医療への応用クローニング技術の科学的検討、Aさまざまな社会的な立場からの意見、B倫理的・宗教的規範からの意見、C法と公益の面からの検討、の4部に構成。議論も、紹介されている文献もすべてアメリカのものに限られているが、人工授精が行われ代理母も定着している国だけに、議論は単なる科学の問題としてではなく日常生活や文化の中の事柄として、具体的に、徹底してなされている。 簡単に答えの出る問題ではなく、絶対的な基準はないが、議論らしい議論のない日本にとっては刺激的な挑戦状となるだろう。 |
| 中村桂子・渡会圭子/訳 産業図書・2800円 |
| (岩) |
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